ピックアップの選び方と調整方法:理想のサウンドを手に入れるための完全ガイド

2018年4月13日ギターの調整,ピックアップ

ギターの音作りに欠かせないピックアップ。正しい調整や交換を行うことで、音質を劇的に改善することができます。本ページでは、フェンダー系やギブソン系ピックアップの調整方法から、交換前に確認すべきポイント、さらに直流抵抗値や位相チェックなど、ピックアップに関する詳細なテクニックを解説しています。

PU交換の基礎知識


ピックアップの調整

ギターの音が気に入らない場合、ピックアップの交換を考えると思いますが、その前にピックアップの調整をしてみましょう。

ピックアップの高さ調整をしてみましょう

まずはピックアップの高さの調整です。

ピックアップの基本
ピックアップを弦に近づけると・・・

  • 長所;音が大きくなり、歪みを得やすく、弾きやすくなる
  • 短所;平坦な音になりやすく、ピッキングの強弱を表現しにくくなる

ピックアップを弦から遠ざけると・・・

  • 長所;ピッキングのニュアンスが生きる
  • 短所;音が小さくなる。歪みにくく、弾きにくい

という基本ルールがあります。もし、歪まなくて嫌だなぁ~という人は、少しピックアップを上げればよいですし、音が濁って嫌!という人はピックアップを下げると解消される場合が多いです。

※アンプや、エフェクターの設定も大きく関係します。


フェンダー系シングルコイルピックアップの場合

シングルコイルPU

ストラトやテレキャスターなどのシングルコイルピックアップの場合、写真のようにポールピース(中心にある丸い金属の棒のこと)自体が磁石になっているタイプがほとんどです。

シングルコイルPU裏

このタイプの場合、ピックアップを弦に近づけ過ぎると、弦振動を磁力が妨げてしまうので(ストリングプル)、特に10フレット以降を押さえたときに音が濁ったり、サステインがなくなったりしますので気をつけましょう。

歪ませて使いたい場合でも、ピックアップは離し気味で、アンプやエフェクターで歪ませた方がピッキングのニュアンスが生き、シングルコイルらしい歯切れのある音が得られるのではと思います。

同じ、シングルコイルピックアップでも写真のようにポールピース自体ではなく、磁石を下に敷いているタイプのピックアップもあります(ハムバッキングピックアップはほとんどこのタイプ)。

シングルコイルPU裏
ハムバッキングPU

このタイプの場合、磁力はあまり強くないので、ある程度弦に近づけても問題ありません。レスポールなどのハムバッキングピックアップも同様です。

 


ギブソン系ハムバッキングピックアップの場合

ポールピースの高さ調整
調整はシングルコイルと同じですが、ギブソン・レスポールやSGなどハムバッキングピックアップの場合、ピックアップの高さ調整の他、ポールピースをネジで調整できるものがほとんどです。

リアとフロントの音量や音質のバランスが決まらない場合、ポールピースの高さを調整してみると良くなる場合が多いです。

 

ピックアップ交換の前に、やることは沢山ありますね。

サウンドがブーミーな場合はピックアップの下に適当なスポンジを敷いて半固定する方法もあります。ピックアップの固定はハウリング対策にもなりますよ。

ピックアップ交換の前に知っておきたいこと

アルニコマグネットとセラミック ( フェライト )マグネット

ギターピックアップで使用されるマグネットは大きく分けて2つあります。

アルニコマグネット
アルニコとは、アルミニウム、ニッケル、コバルトの合金の略称で、50~60年代のギターアンプのスピーカーやエレキギターのピックアップに採用されたマグネットで、豊かな中低域とキラキラした高音域が特徴です。

アルニコマグネットは、合金の成分比によって特性が異なり、ピックアップでよく使われるのはアルニコ2(II)からアルニコ5(V)です。これらは磁束密度に違いがあり、それぞれ音質が異なります。

  • アルニコ2(II):
    クリーミーで甘い高音域、力強くゆるやかな中音域、ウォームな低音域が特徴。低出力で、ダイナミクスのあるサウンドが可能。
    → クリーンなトーンやブルース系サウンドに最適。
  • アルニコ3(III)アルニコ2に似ているが、より高音域の表現力が豊かで、低音域が締まった、くっきりとした輪郭のトーンを持つ。出力は最も低い。→ ヴィンテージ感を重視したサウンドに。
  • アルニコ4(IV)
    アルニコ2とアルニコ5の中間的なキャラクター。ナチュラルな音質で、全音域がバランス良く出力される。低~中出力。→ バランスの取れたオールラウンドなトーン。
  • アルニコ5(V)
    最も迫力があり、強いアタックを生み出す。クリアなトーンで、低音域と高音域の表現力に優れる。出力は高め。→ ロックなどのハードなジャンル向き。

ヴィンテージ系サウンドを狙うならアルニコマグネットのピックアップをおすすめします。

 

セラミック ( フェライト )マグネット
セラミックは、1960年代に開発されたマグネットで、アルニコに比べ、高域の伸びが良いのが特徴です。モダンでハイパワーなものが多く、お使いのギターにパワーが欲しいという方はセラミックを選びましょう。

セラミックで特に有名なのはディマジオのSuperDistortion ( DP100 )です。

DIMARZIO SuperDistortion ( DP100 )

 

CuNiFe
CuNiFeとは、銅=Cu、ニッケル=Ni、鉄=Feという磁性合金を使用したピックアップで、Telecaster CustomやThinline、Deluxe等に搭載されたワイドレンジ・ハムバッカーに使われたマグネットとして有名です。

FENDER CuNiFe Wide Range HUMBUCKER

近年ではテレキャスターだけでなく、ストラトキャスターやテレキャスター、ジャズマスターにフィットする(装着できる)CuNiFeピックアップも発売されています。

 

パワーの目安は直流抵抗値

ピックアップ調整をしても理想のサウンドが得られない場合、ピックアップ交換ということになると思いますが、ピックアップはお店で試奏出来るわけではないので、どれが良いのか迷うと思います。

当サイトではピックアップをヴィンテージ、ハイパワー、シングルコイルならさらにノイズレス系とシングルサイズハムバッカーに分類していますが、パワーの目安である直流抵抗値にも注目してみましょう。

 

ヴィンテージ系ピックアップの直流抵抗値
ヴィンテージ系と呼ばれるピックアップの直流抵抗値は、一般的に以下の範囲に収まることが多いです。

  • ハムバッキングピックアップ:7kΩ ~ 8.5kΩ
  • ストラトキャスター用シングルコイル:5.5kΩ ~ 6.5kΩ
  • テレキャスター用シングルコイル:5.5kΩ ~ 7.5kΩ

これらの範囲を基準に、それよりも高い抵抗値のピックアップは、ハイパワーな特性を持つピックアップということになります。

 

抵抗値による音の傾向
一般に、ピックアップの直流抵抗値が低めの場合は、ブライトでクリアなサウンドが得られます。抵抗値が高めの場合は、ミッドレンジが強調されたウォームでパワフルなサウンドになる傾向があります。

ただし、音質は抵抗値だけで決まるわけではありません。使用されるワイヤーの種類やマグネットの素材・強さによっても大きく変化しますので、直流抵抗値はあくまでもピックアップ選びの一つの目安と考えてください。

セットで販売されているピックアップの場合、フロントピックアップの方が弦振動が大きく、音を拾いやすいため、直流抵抗値が低めに設計されていることが一般的です。

もちろん、同じピックアップをフロントとリアの両方に搭載しても問題ありませんが、専用に設計されたピックアップのほうが全体のバランスは取りやすいとおもいます。

※当サイトで紹介しているピックアップは直流抵抗値も表記済です。

 

直流抵抗値の測定(ピックアップ直接)

ピックアップのパワーを測る目安として用いられる直流抵抗値は、テスターを使えば簡単に測定できます。手順は以下の通りです。

ピックアップの直流抵抗値のチェック方法

  • テスターをΩモードに設定します。
  • ピックアップのケーブル両端にテスターのプローブを当てる。

これだけで、直流抵抗値を計測できます。

例えば、VAN ZANDT ROCKモデルの直流抵抗値は7.11kΩで、これを見ると、シングルコイルにしてはパワフルなピックアップであることが分かります。

ピックアップのパワーの目安は直流抵抗値。直流抵抗値はテスターで測定できます

直流抵抗値の測定(ギター経由)

また、ピックアップをギターに搭載した状態でも、シールドケーブルを使ってテスターで測定することが可能です。方法は次の通りです。

直流抵抗値の測定(ギター経由)

  • ギターにシールドケーブルを接続します。
  • 測定したいピックアップを選択し、ボリュームとトーンを最大にします。
  • テスターの赤いプローブをプラグの先端(Tip)、黒いプローブをプラグの外側(Sleeve)に当てます。

※ギターに取り付けた状態で測定すると、ボリュームポットやトーンポット、シールドケーブルの影響を受けるため、直流抵抗値に1~5%程度の誤差が生じます(シールドケーブルケーブルはなるべく短いものを使いましょう)。

例えば、私のギターで計測した結果は以下の通りです。

DIMARZIO Air Zone・Air Norton

  • Air Zone (DP192):公称抵抗値17.49kΩ → 実測値16.5kΩ
  • Air Norton (DP193):公称抵抗値12.58kΩ → 実測値12.2kΩ

逆に言えば、ギターにセットアップした状態で計測する場合、測定値に1~5%をプラスすれば、おおよその公称値がわかると言えます。

例えばお使いのギターの直流抵抗値が8kΩでもしパワーが足りないと思ったら直流抵抗値の大きなピックアップを購入すれば良いわけです(ピックアップのサウンドは直流抵抗値だけで決まるものではありませんが)。

テスターは必需品

ピックアップをセットではなく、個別で購入した場合でもテスターがあると非常に便利です。テスターを使って直流抵抗値を測定することで、どのピックアップをどこに取り付けるべきかがすぐに分かります。例えば、直流抵抗値が高いピックアップをリアに、低いピックアップをフロントに設置することで、音量バランスが取りやすくなります。

テスターは比較的手頃な価格で購入できるため、ギターのカスタマイズを行いたい方は、1台持っておくと非常に役立ちます。

デジタルマルチテスター

小型デジタルテスター

 

詳細を見る

posted with カエレバ

手持ちのギターのピックアップの直流抵抗値を測ってみた 

位相のチェック

ピックアップをセットで購入する場合は問題無いですが、リアだけとかフロントだけとか個別で購入する場合に問題になるのが位相です。

それぞれのピックアップ単独で使う場合は問題ないのですが、ハーフトーンなどピックアップ同士をミックスした時に位相が合っていないと音が小さくなって、ミョンミョンとしたフェイズした音になってしまう場合があります。

位相が合っていない場合は、片方のピックアップの+と-を入れ替えれば問題ないのですが、手元にアナログテスターがあれば事前に調べることができます。

位相のチェックの方法は、アナログテスターをΩモードにして、テスターの赤いプローブを白(+)、黒いプローブを黒(-)につなぎ、ピックアップのポールピース(磁石部分)をドライバーなどで軽く叩きます。

ピックアップの位相のチェックはアナログテスターで行ないます

その時にテスターの針が左右どちらに振れるかをチェックし、ピックアップ全てが同じ方向に振れれば位相が合っている、逆に振れれば位相が合っていないということになりますので配線時にどちらかのピックアップの+と-を逆にすればOKです。

アナログマルチテスター

 

詳細を見る

posted with カエレバ

 

リバースワイヤリング/RW/RP ( 逆巻き/逆磁極 )

販売サイトへ行くと、リバースワイヤリング RW/RP(逆巻き/逆磁極)という表示を見かけることがあると思います。

リバースワイヤリング/RW/RP ( 逆巻き/逆磁極 )のピックアップ

リバースワイヤリングとは、文字通りコイル(と磁石)を逆にしたピックアップで、ハーフトーンなどでピックアップをミックスした時にノイズが消えるようになっています。

必須ではないですが、ハーフトーンをよく使う方はミドルピックアップ/センターピックアップにリバースワイヤリングのものを選択すると良いでしょう。

よくわからない方はセットでの購入が無難かも。

コイルタップ可能な4芯ピックアップ(4C SHIELDED)の接続方法

コイルタップとは、ハムバッキング・ピックアップの2芯シールド線を内部で分割し4芯にしたピックアップのことです(4C SHIELDED)。

コイルタップ可能なピックアップ(セイモア・ダンカン)

4芯シールド仕様のピックアップの利点は、ハムバッキング・ピックアップとしての使用はもちろん、片側シングルコイルや位相を変えるといったバリエーションがスイッチで行えるので様々な音を出したいギタリストにおすすめのピックアップです。

※コイルタップ可能な4芯のカラーはメーカー毎に異なります。詳しくは公式サイトまたはマニュアルを参照してください。

コイルタップ可能な4芯の配線はメーカー毎に色が異なります

セイモアダンカン
黒をホット、白と赤を繋ぎ、緑をコールドにすると通常のハムバッキングピックアップ(直列/シリーズ)として動作します。

→ コイル1 黒(+) 白(-)
コイル2 赤(+) 緑(-) →

ディマジオ
赤をホット、黒と白を繋ぎ、緑をコールドにすると通常のハムバッキングピックアップ(直列/シリーズ)として動作します。

→ コイル1 赤(+) 黒(-)
コイル2 白(+) 緑(-) →

ピックアップまとめ

おすすめ記事