ギターを改造や調整する上で、配線や回路図は欠かせません。このページではFenderのStratocasterやTelecaster、JazzMaster、Mustang、Duo Sonic、さらにはGibson系の様々な配線を詳しく紹介しています。

※こちらのページでは配線図の紹介のみを行っています。個別の質問には対応しておりません。詳しい手順や解説は、リンク先をご参照ください。作業は自己責任でお願いします。
はじめに:主要モデルの配線/回路図
ピックアップ交換など、ギターの改造/ 調整を自分でやるときはギターの回路図を手に入れ、作業前には必ず元の写真を撮っておきましょう。
分からなくなったときに写真や回路図があると安心です。
※ハムバッカーの片側のコイルだけを鳴らす回路は、本来「コイルスプリット(Coil Split)」と呼ぶのが正確ですが、日本では一般的に「コイルタップ」と表現されることが多いため、本記事では「コイルタップ」と表記しています。
Stratocaster ストラトキャスター
3S・1ボリューム・2トーン
一般的な3シングルコイルのストラトキャスターの配線図。

白黒2芯のピックアップの場合、ホット(+)は白、コールド(-)は黒になります。
2つのピックアップを同時に鳴らした(ミックスした)ときにペラペラした音になるときは位相が合っていない場合が考えられますので片側の配線を逆にしてみて下さい。
参考:
ボリュームポットは、シングルコイルのギターの場合250kΩを使用しますが、ハムバッキング構造のノイズレスピックアップや、シングルサイズハムバッカー、HSHやSSHなどのバリエーションモデルには500kΩのポットを使用する場合もあります(250kΩで音がこもると感じる場合は500kΩを使用しましょう)。
コンデンサーは0.047μF(マイクロファラッド)が一般的ですが、50年代のヴィンテージのストラトキャスターには0.1μFのコンデンサが使われていたので交換してサウンドの違いを楽しむのも面白いと思います(絞るとかなりこもった音になります)。
また、中域の抜けが良い0.022μFのコンデンサー(主にハムバッキング用)を使っても良いと思います。


3S・1ボリューム・1トーン
こちらは、トーンを1つ減らして、マスターボリューム、マスタートーンにした配線図です。ストラトキャスターのボリュームの位置が邪魔!という方は、ポットを1つ減らしたこのレイアウトがおすすめです。


ERIC JOHNSON Stratocaster(3S・1ボリューム・2トーン)
エリック・ジョンソンのストラトキャスターは、マスターボリューム、フロントトーン、リアトーンとなっていて、リアにもトーンが効く仕様になっています。
配線は、1本つなぎ替えるだけなので、ハンダを使ったことのある方なら簡単にできる改造です(エリック・ジョンソンの場合リアに DiMarzio HS-2というコイルを縦に積んだハムバッキング構造のピックアップを使用していますが、ハムバッキングとしては使用せず、トップコイル(シングルコイル)のみを使用していますので、シングルコイルと同じ配線になります。
SSH・1ボリューム・1トーン
※ハムバッキング・ピックアップの取り付けは、ピックガード及びボディの加工が必要になりますが、シングルサイズハムバッカーの場合は加工無しで取り付け可能です。
コイルタップ無し

4芯のカラーはセイモアダンカン用です
コイルタップあり
ブリッジ+ミドル使用時にハムバッカーがコイルタップされハーフトーンになるパターン(オートマチックコイルタップ回路)。
1 HUMBUCKER + 2 SINGLE COILS 1 VOL / 2 TONE / 5-WAY BLADE (AUTO-SPLIT IN POSITION 2):

参考:Wiring Diagrams – Tonerider・4芯のカラーはディマジオピックアップ用だと思われます
HSH・1ボリューム・1トーン
※ハムバッキング・ピックアップの取り付けは、ピックガード及びボディの加工が必要になりますが、シングルサイズハムバッカーの場合は加工無しで取り付け可能です。
コイルタップ無し

4芯のカラーはセイモアダンカン用です
コイルタップあり
DPDTミニトグルスイッチを取り付けることで、ハムバッカーをコイルタップできるサーキット。
2 HUMBUCKERS + 1 SINGLE COIL 1 VOL / 2 TONE / 5-WAY BLADE (DPDT MINI-TOGGLE SPLIT):

参考:Wiring Diagrams – Tonerider・4芯のカラーはディマジオピックアップ用だと思われます
※見えにくいので補足:トグルスイッチ用のアースはフロント/リア両方に必要です。

※ミニトグルスイッチの接続は上記回路図では「d」のパターンですが、他にも以下のようなパターンがあります。簡単に言うと、「a」と「b」は、コイル2を使用し、「c」と「d」は、コイル1を使用し、使わない時はショートさせる方式です。
それぞれメリットとデメリットがありますのでいろいろ試してみると面白いと思います(こちらでも紹介しています)。

Telecaster テレキャスター
一般的なテレキャスターの配線図。

白黒2芯のピックアップの場合、ホット(+)は白、コールド(-)は黒になります。
ミックスしたとにきペラペラした音になるときは位相が合っていない場合が考えられますのでこちらを参考にして下さい。
シングルコイルの場合、ポットの数値は250kΩコンデンサは0.047μF(マイクロファラッド)が一般的ですが、70年代のテレキャスター(正確には1967年かららしい)やカスタムやデラックスなどハムバッキング仕様のギターには1メグΩのポットが採用されています。
以下は「エレクトリックギター・メカニズム」より~
Esquire & 50s,60s,70s Telecaster

Telecaster Deluxe

Telecaster Custom

Telecaster Thinline

JazzMaster ジャズマスター
一般的なジャズマスターの配線図。

ジャズマスターはシンプルな1ボリューム1トーンの回路に、1クリックでウォームなトーンに移行できるプリセットスイッチが搭載されていますので少し複雑です。
またポットは一般的な250kや500kではなく1M(メグ)Ωを使用している点もチェックです。コンデンサはメイン回路は0.03μF、プリセットスイッチ用には0.02μFが使用されています。
ストラトキャスターなどと併用する方で、音質に違和感を感じる方は、ポットを500kや250kに交換して出音を落ち着かせるのも面白いかもしれませんね。
ポットの抵抗値の測定方法はこちら:
ギターのコントロールを極める!ポットの選び方とおすすめガイド
Jaguar ジャガー
一般的なジャガーの配線図。

ジャガーもジャズマスターとほぼ同じ回路で、ポットは1M(メグ)Ωを使用していますので注意しましょう。
コンデンサはメイン回路には0.01μF、プリセットスイッチ用には0.01μF、ピックアップのセレクター部には0.003μFが使用されています。
Mustang ムスタング
一般的なムスタングの配線図。

ムスタングのピックアップはストラトキャスターと同じ規格のシングルコイルですのでポットは250kΩです。
コンデンサは0.047μFが一般的です。
上部の2つのスイッチでミックス時の位相を(インフェイズ←・→アウトオブフェイズと)切り替えられるのが特徴です。
Duo Sonic デュオソニック
一般的なデュオソニックの配線図。

ムスタングの姉妹機種デュオソニックもほぼストラトキャスターと同じで、ポットは250kΩ、コンデンサは0.047μFが一般的です。
オリジナルモデルはミックス時に2つのピックアップがシリーズ(ハムバッキング)になる点も注目です(現行モデルはパラレルミックス)。
ちなみに現行のFENDER Player Duo-Sonicのポットは500kでした。
FENDER Player Duo-Sonicのポットとコンデンサ交換

参考サイト
上記回路図はセイモアダンカンのサイトより引用していますが、セイモアダンカンのサイト(英語)では様々なギターやベースの回路図を検索できますので非常に便利です。
➡Wiring Diagrams – Seymour Duncan | Seymour Duncan
GIBSON系 2ボリューム2トーン
2ボリューム2トーンのレスポール、SG、ES-335などの配線パターン。
ハムバッキングピックアップの場合のポットは500kΩ、コンデンサーは0.022μFを使用するのが一般的ですが、明るいトーンのピックアップを使用している場合は主にシングルコイル用の0.047μFや、より音域の広い(こもりの強い)0.1μFのコンデンサを使うこともできます。
また、ギブソン系ギターは同じギター機種であっても年代によって配線が異なりますので、興味のある方は色々試してみるとよいでしょう。
以下のサイトを参考にしています。
ギブソンはなぜ現代的な配線に切り替えたのでしょうか:
1960 年代に入りギブソンは従来の50 年代の配線から、モダン配線と呼ばれるものに切り替えました。ギブソンがなぜこの変更を行ったのかについては、推測するしかありませんが、当時のギタリストは、調整が簡単なものを欲しがっていたか、ハイエンド重視の 50 年代配線よりも、モダン配線の「肉厚な」中音域重視を好んでいた可能性があります。
いずれにしても、ギタリストは、ハンダ付けとピックアップの配線に関する基本的な知識があれば、モダンから 50 年代へ、またその逆へ簡単に切り替えることができます。
50s style wiring:
1950年代のギブソンで採用された配線です。

レスポール ’50s 配線:
Les Paul ’50s の配線を簡単に言うと、トーンポテンショメータ(ポット)の外側のラグが 0.022uf のコンデンサを介してボリューム ポテンショメータの中央のラグに接続されます(ボリュームポットの前段にトーン回路が接続される)。
Les Paul ’50s の配線は、ほぼ無限の音色特性で有名です。ピックアップ間の分離は少ないですが、ボリュームを下げても高音域が増し、コントロールのインタラクティブ性も向上します。ただし、トーンポットを下げると、音量が若干低下します。
イメージとしてはテレキャスターにハイパスフィルターを入れたような、ボリュームを絞っても「高域が残るサウンド」です。
Modern Style Wiring Typically Stock:
1960年以降~現代までに採用される配線です。

レスポールモダン配線:
モダン配線は、トーンポテンショメータ(ポット)の中央のラグが 0.022uf のコンデンサを介してボリューム ポテンショメータの外側のラグに接続されます(ボリュームポットの後段にトーン回路が接続される)。
レスポールのモダン配線では、ボリュームを下げても全体の音量はより良く維持されますが、高音域が少し失われるという代償があります。明るいトーンを持つピックアップを使用している場合は、それほど悪い考えではないかもしれません。ボリュームを下げて高音域が同じ量だと、トーンが鋭くなりすぎる可能性があるからです。
コメント:
私のレスポールは Typically Stock(モダン配線)、SGは 50s style wiringで、これらの2つの配線を比較すると、ボリュームを絞ってクリーンを出す用途では、Typically Stock(モダン配線)の「音が少しこもってくれたほうが」使いやすいです(同じ理由でテレキャスターのハイパスフィルターは嫌いなので外します)。
また、50s style wiringは、ボリュームを絞った状態でトーンを絞るとかなり音量が下がりますので、あえて「50s style wiring」にする必要はないと思います。
私のSGも、使いやすさ重視でモダン配線に変えました。
その他の人気のレスポール配線
最も一般的なのは 50年代スタイルとモダンの2つですが、以下の配線も実用的です。
50s Style Wiring With Independent Volume Controls

50s Style Wiring With Independent Volume Controlsは、トーンポテンショメータ(ポット)の外側のラグが 0.022uf のコンデンサを介してボリューム ポテンショメータの外側のラグに接続されます。
これは、50sの特性をベースにしつつ、センターピックアップ(ミックス)時の各ピックアップのボリュームがより独立して機能するように調整されたバリエーションになります。
ピックアップが4芯線(4C SHIELDED)の場合は、さらに多くのバリーエーションを得ることが可能になります。
Les Paul Coil Split Wiring Diagram

コイルスプリットは、ハムバッカー搭載ギターの最も一般的な改造の 1 つです。プッシュ/プル対応のポットを使うことで、ハムバッキング・ピックアップをシングルコイルにしたり、また元に戻したりできます。
モダンから 50年代のワイヤリングに切り替える場合とは異なり、この改造ではボリューム用に 2つの特別なプッシュプル (またはプッシュプッシュ) ポテンショメータ (理想的には 500k) が必要です。トーンは標準のポットを使用できます。
※コイルタップ可能な4芯のカラーはメーカー毎に異なります。
What Is Jimmy Page Les Paul Wiring?

ジミー・ペイジのレスポール配線:
ジミー・ペイジ・レスポール・ワイヤリングは、その名の通りジミー・ペイジが使用したことで有名な、やや複雑なレスポールの配線方法です。この配線を使うことで、異なるワイヤリングを施した複数のギターを持ち替えることなく、21種類もの多彩なトーン(そのうち10種類はハムバッカーサウンド)を1本のギターで生み出せます。
ジミー・ペイジ・ワイヤリングでできること:
- 各ハムバッカーをシングルコイルとして使用(コイルタップ)
- ピックアップ(ハムバッカー・シングルコイル両方)を直列・並列に切り替え
- ピックアップの位相(イン/アウトフェイズ)の変更
この配線は非常に複雑なため、配線図を参考にしながら慎重に作業することが大切です。半田付けのミスを防ぐために、作業前に何度も確認しながら進めると良いでしょう。しっかり組み上げれば、多彩なトーンを1本のギターで楽しめるようになります。
※コイルタップ可能な4芯のカラーはメーカー毎に異なります。
ObsidianWireから発売のレスポール用ワイヤリングキット
ObsidianWire Vintage MKII for Les Paul:
ワイヤリングキットでおなじみの ObsidianWireからレスポールの50sと60s(モダン)の配線をスイッチで切り替え可能なワイヤリングキットが発売されています。
ハンダ作業や各パーツの組み込みの手間がなく、簡単に機器のアップデートが可能です。

※ポットはロングシャフトになります。
ObsidianWire The Ultimate’ Wiring for Les Paul // JP Mod:
The Ultimate’ Wiring for Les Paul // JP Mod は ジミー・ペイジのNo.2レスポールの配線を可能にしたモデルです。



※ポットはロングシャフトになります。
GIBSON系 2ボリューム1トーン
フライングVなど2ボリューム1トーンの配線パターン。
フライングVなど、2ボリューム1トーンのギターも、ハムバッキングピックアップを使用していれば、ポットは500kΩ、コンデンサーは0.022μFを使用するのが一般的です。
また、配線は年代によって配線が異なりますので、興味のある方は色々試してみるとよいでしょう。
Gibson Wiring Diagrams – Wiring Library – Schematicsより~
50s Style Wiring 1:

50s Style Wiring 2:

Modern Style Wiring 1:

Modern Style Wiring 2:

▼その他配線はセイモア・ダンカンのこちらのサイト(英語)が参考になります。機種名やピックアップの数を指定するだけで様々なモデルにはの配線図を見ることが出来ます。
Wiring Diagrams – Seymour Duncan | Seymour Duncan

メーカー別:4芯ピックアップのケーブルカラー
コイルタップ可能なピックアップ(4C SHIELDED)とはハムバッキング・ピックアップの2芯シールド線を内部で分割し、4芯にしたピックアップのこと。

4芯シールド仕様のピックアップの利点は、ハムバッキング・ピックアップとしてはもちろん、片側シングルコイルや位相を変えるといったバリエーションがスイッチで行えるので様々な音を出したいギタリストには人気です。
※コイルタップ可能な4芯のカラーはメーカー毎に異なります。詳しくは公式サイトまたはマニュアルを参照してください。
ハムバッキングとして使用する場合:
セイモアダンカンの場合、黒をホット(+)、白と赤を繋ぎ、緑をコールド(-)にすると通常のハムバッキングピックアップ(直列/シリーズ)として動作します。
→ コイル1 黒(+) 白(-)
コイル2 赤(+) 緑(-) →
ディマジオの場合、赤をホット(+)、黒と白を繋ぎ、緑をコールド(-)にすると通常のハムバッキングピックアップ(直列/シリーズ)として動作します。
→ コイル1 赤(+) 黒(-)
コイル2 白(+) 緑(-) →
その他メーカーに関してはこちらをご覧ください。
▶ Pickup color code chart MAMA Pickups(pdf)
※一覧にない場合は「ブランド名 Pickup color code chart」で検索すれば出てくると思います。

おすすめ書籍:エレクトリックギター・メカニズム
巻末の豊富な配線例がありがたい。ギターピックアップの交換はもちろんその他の改造にも無くてはならない本ですのでギターの調整や改造に興味のある方は是非。

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